ミルコの趣味雑談

趣味を持つ事は大事です。始め方や、道具を揃えることなど雑談です。

格闘技と武道と趣味vol7~テコンドーとその限界~

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《李先生について》

テコンドーについては、本格的に学ぶ他武道であったので、新鮮な刺激を感じた。

派遣されてきた李先生はクッキオン専従かどうか判らないが、中年もあり、技に切れ味は無かったが、熱心な良い指導者だった。N先生の経営するマンションの一室に単身で住むことになり、たまに韓国から奥さんが様子を見に来ていた。

私としては余り関わる事が無かったが、カメラ業界にいた私は、当時韓国で日本からのカメラの輸入には高関税がかかっていた為、日本からの土産はカメラがとても喜ばれるし、転売目的での購入も多く九州では人気商品として韓国客がよく買ってくれた。

李先生も友達への土産としてカメラが欲しいとの事で、卸価格で販売してあげた。マンションに届けに行った時、李先生は将来、子供を日本の大学に入れたいと言って、日本の生活や文化をとても気に入っていた。韓国人の中には先進国日本を羨む気持ちが潜在的にある様に感じた。

 《テコンドーの本当のルーツ》

そんな李先生の計らいもあり、テコンドーを始めて1年で、二段を取得できた。テコンドーは韓国の古武道テッキョンから発展した韓国古来の武道と言う事だったが、実は第二次大戦時日本の統治下にあった韓国で、軍人が現地韓国人鍛錬の為に空手を指導したことがルーツであり、公然の秘密なのだ。

《テコンドーの体系と競技形式》

 テコンドーは空手と近い教育科目になっていた。型と組手である。

 型は太極(テイグゥ)1章から8章まであり、それぞれの段位に応じてマスターする。組手はオリンピック競技ルールに従ったもので、ほぼキックでポイントを取って行く。

 

リングが8m四方で1対1で行われ、1Rが2分間を3Rで競われる。 攻撃は胴体に装着するプロテクターと頭部に装着するヘッドギアに対してのみ可能で、それ以外への攻撃は禁止されている。 胴体へのパンチと蹴り、頭部の蹴りのみが有効と認められ、中央のレフリー(主審)とコーナーにいる副審により決まる。

 面白いのはこのポイントで、テコンドーは多彩な蹴り技が最大の見どころとしている。試合でのさまざまな足技の応酬が醍醐味としてPRしている。

なかでもポイントで劣勢の選手が終盤に見せる「上段後ろ回し蹴り」は、一発逆転の大技とし、後ろを向いたと思った瞬間、死角から頭部に蹴りが飛んでくる素早い回し蹴り等は、決まると5ポイントになる大技である。リードしていても逆転可能なのだ。極限にまで、股関節の柔軟性を高め、大半の選手が180度開脚できるという。これは相撲取りの又割同様怪我の防止にもなる。

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                  競技(試合)

《テコンドーとはどんな組織か》

 競技人口・団体運営としてのテコンドーについて記載しておきたい。

 良く言うのは「足のボクシング」とも呼ばれ、漢字では「跆拳道」と書き「跆」は、踏む・跳ぶ・蹴る等の足技を意味し、スピーディーかつ多種多様な蹴り技が繰り広げられるスポーツを標榜している。

オリンピックの競技に採用されているのはWTFで、競技人口は世界で5000万人とも7000万人とも言われているが、WTF韓国系団体であり、北朝鮮系のテコンドー連盟は、ITFであると聞かされた。同じテコンドーであるが、ITFの方が若干日本の空手に似ている気がする。オリンピックでの試合では、電極を胴やヘッドギアに付けて、フェンシングの様に判定をしていると言う。

《他武道とテコンドー》

 テコンドーはかなりの他武道から転身者が多い、他武道・他格闘技転身者は足技の多彩さには驚く。少林寺拳法にはローキックは無いが、テコンドーにもローキックは無い。なぜなら、胴よりしたの攻撃は無効であり、反則にもなる。”かかと落とし”として亡きK-1ファイターのアンディフグの得意技っだったが、これはテコンドーのネリョチャギである。この技は奇抜なだけではなく、ディフェンスにもなっている。

極真等空手系はの蹴りの動きには一言で言えば破壊力を感じる。"剛"の蹴りである。対してテコンドーは予測を超えたスピードと方向からの多彩な蹴りで、”柔”の蹴りと言った感じである。

少林寺拳法では蹴りと言えば、前蹴り、足刀、足の親指付け根で蹴る廻蹴り、後ろ蹴り等オーソドックスな足技しか無いが、テコンドーには無数にある。エキシビジョンなどでは空中での三連蹴りや回し蹴りを見る事もできる。

その為、どうしても体の重心は後ろに掛かり、アップライトで常に前に出ている足はいつでも蹴れる体勢にしている。相手との間合いを詰める時も、後ろ足でケンケンするように前足を浮かせて、常にネリョチャギが出せる様にしている。

 この様な多彩な足技は新格闘技、極真、K-1等ではかなり取り入れらえている。それだけ進化した蹴り技なのだ。

《ブラックなイメージのテコンドー協会》

 しかし。今一つ人気が無いのが現状で、協会のスキャンダルの多さも影響している。2019年のニュースで話題になった金平会長問題、2004年アテネ五輪の出場権を獲得したは岡本選手は、競技団体の分裂騒動でその権利を剥奪されようとしていた騒動や組織団体としての問題が多すぎる。

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テコンドーを始めた当初も似たようなもので、N先生が門下生を一斉にテコンドーへ転身させ、一気に規模を大きくし一大勢力になっていく過程で、既存の福岡のテコンドー連盟とは上手くいかなかった。一気に競技人口を増やそうとした背景に、利権や金にまつわるいざこざはここにも顕在化したと思う。

李先生も既存の協会とは直接関りが無いため、ある意味福岡の県連に入るメリットも拘束も無いため、当時空いていた長崎県の県連を自前で立上げ、会長に収まってしまった。聞く所では今は熊本の県連会長も抑えたと聞く。パワーゲームかもしれないが、歪であり、まとまりの無さがこのようなところにも良く出ている。

《競技テコンドーの歪》

 テコンドーがオリンピックを意識して勝敗に拘る競技性を高めたことで、本来の武道性はどんどん薄まったと感じた。

足の威力はあるものの、蹴り技を多用することで、運動量は多くなり、短時間で体力を消耗する。トリッキーな動きで相手のスキを突く、どうしても足技主体であるため、間合いは遠めになるので、間合いを詰めるための足捌きや、踏み込みの速さ、回転技の多用などは、ある一定年齢をピークに一気に体力的限界に達する。

息の長い武道としての修練を楽しむには、過酷であり、そこは少林寺拳法の様な、年齢層を意識した練習体系にはなっていなかった。

《競技テッコンドーの限界》

とても年寄りにできる競技では無くなってしまった。これはS先生と研鑽してきた格闘技とは明らかに異なる方向性であった。

 その為、2段を取得し、指導もしていたが、私はテコンドーで得た知見を新格闘技生かし、生涯武道をテーマに重きを置くことにした。

 審判や型の指導等は経験年数を重ねる事で深みを増すものかもしれないが、それが生涯武道では無いと感じたのだ。

以前”強い”とはどういう事か書いたが、耐力や持久力、筋力、瞬発力等は必ず落ちる。但し、基礎的な体力を維持することで、ある程度は維持できる。それは節制であり、日々の健康増進、トレーニングであるが、これも年齢によって内容を変えながら、オーバーワークにならない様にしながら、武道ができる体を維持し、生涯を通じて武道を続けられることを重視したい。

但し、これは”強さ”とは違う。しかし、その年齢、体力でどう対応して行くかの判断ができる様に、自身の体をコントロールしている事が重要だと思う。

よく剣道の高段者が、年老いて腰が曲がっていても、竹刀を持つと背筋が伸び、しっかりとした足取りで、しかり剣をふるう事ができる。これが武道のあるべき姿ではないかと思う。

とても近い発想の武道として、これもルーツを中国の大成拳(意拳)に持つ

拳聖と言われた澤井 健一先生の”太気拳”がある。極真空手創始者大山倍達や柔道のヘーシングにも多大な影響を与えた方で、その姿をYOUTUBEで見ることができる。

無駄がそがれ、非常に少ない動きで最大限の威力を発揮し相手を制する”枯れた”武道である。

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