ミルコの趣味雑談

趣味を持つ事は大事です。始め方や、道具を揃えることなど雑談です。

格闘技と武道と趣味vol9~生涯武道と太気拳~

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太気拳創始者

ここで、この澤井先生の太気拳について少し説明と思いを感想を述べたい。

澤井健一先生のWikipdia等のプロフィール

出生地: 福岡県 生年: 1903年 死亡: 1988年

と言う事なので、今から118年前に生まれ、85歳の23年前に亡くなっている。福岡にずっといた訳ではなさそうなので、会う機会があったかどうか判らないが、少なくても初期の高弟はいまだ健在で、直接の伝授された教えや、技を知ることができるはずで、まだまだ、初期の太気拳の姿を知ることができると思う。

大山倍達宗道臣と時代を共にしている方である。写真からも老年になっても鍛錬されていたことがうかがえる。

大気拳創出のきっかけになるのは中国において王向斎(オウコウサイ)宗師より意拳(大成拳)を学び、師の許可を得て創始したとある。となるとその王向斎宗師系の門弟もまだ生きてそうな気がするのでちょっと興味が沸く。

太気拳とは》

その鍛錬の基本は四つで「立禅( りつぜん)」「揺(よう)」「這(はい)」「練(ねり)」「内功」を養う、気を練る事を基本とした気功法である。練習体系がシンプルなのに、実戦的な動きを主体とする拳法である。
ここで、ルーツの中国拳法の「意拳」を説明しておくと、別名「大成拳」とも言い、1920年代に中国で王向斉(1885~1963)により創始された拳法とある。

王は中国河北省深県に生まれ、形意拳の名人と言われた郭雲深に武術を学んだ方で、形意拳は、太極拳八卦掌の三拳で内家拳と総称され、気を練り内功を養うことを特徴としている。

太気拳誕生秘話》

澤井先生の形意拳との出会いのエピソードですが、先生は武芸に秀でており、隼流館(双水執流)、講道館柔道、剣道、居合道等の流派を学び、柔道五段、剣道四段、居合道四段と言う、投げる、締める、切ると言うスーパー武道家でした。1931年に中国に渡り、友人の紹介で王に面会し、手合わせをする機会を得た訳です。

当時30代も半ばの澤井先生は武道家として一番充実していた時期だった。

王が痩身で小柄な老人で負ける訳がないと見えたところが、澤井先生の柔道の技は封じ込まれたばかりか、剣道の技で挑戦しても、棒切れ一本で簡単に払われ、澤井先生は完敗を喫した。

そこで、弟子を取らないと言う王に弟子入りを懇願し、「決してこの武術の修行を止めません」という血書まで書いて一週間かけて許可されたと言う。

その様なドラマチックな出会いから修行を積み、1945年8月。終戦後、 日本へ帰国し、一人で站椿功(たんとうこう)を中心とした鍛錬に励んでいたと言う。 そして王向斉の命を受け、意拳に自らの柔道・剣道・居合道等の武道の要素を加え太氣至誠拳法(通称・太気拳)を開いたのです。

 《独特な太気拳の修行》

太気拳創始後、澤井先生は道場を構えず、東京の明治神宮野外にて指導と実践を続けていました。 その為、太気拳独特の修行法と激しい実践組手の場として神宮の杜は貴重な修練場となった太気拳の4つの修練法を簡単に説明します。

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太気拳 修練方法》
「立禅」:基本となる力を養う
太気拳において基本となる稽古方法が立禅です。 立禅は鍛錬と静的禅を合わせたもので、無心の状態で自然に立ち、胸の前でボールを抱くように腕を上げ、10分とか20分とかそれ以上の時間を掛けて行います。やってみると判りますが、姿勢を維持する事や、膝を軽く曲げて立つことで、全体の筋力の自然な鍛錬とバランスの良い姿勢が無理なく培われます。
「揺」:自然の力を動きの中に活かす
片足を前に出した半身での立禅(半禅)から、ゆっくりと糸を繰るように腕を伸し、縮める。 立禅を継続する事で身体中にバネのような弾力や波動を受けたようなうねりを感じならら上半身全体のバランスを保ちます。 それらの感覚は直線的なものでは無く、まさに渦の様なものです。全身に受ける重心の動きを利用して全身の筋肉、関節、筋と発する気がバランスよく無理なく自然に動く状態を培います。この動きが「揺(ゆり)」です。
「這」:下半身を練る
運歩法が、武術の基礎です。「這」は泥の中で歩むようにゆっくりと同じ歩幅で腰を落とし腕を上げ、ゆっくりと歩みます。腰をかがめず、後ろ脚をしっかり前足の横にすり足で寄せ、ゆっくりと斜め前に踏み出します。腰の位置は一定に進んで行くことは、下半身を自然と鍛え、安定させます。しかし、上半身とのバランスが重要で、意識を全体の動きとして流れる様に歩みます。

「練」:統合的な動き
「立禅」を「揺(ゆり)」「這(はい)」を通じて動きの中でも維持できるようにします。 その動きをもう少し大きな動きの中で発揮します。 移動稽古のように前後に歩みながら腕を回すような動作を行います。これが「練(ねり)」となります。

練にはいくつものパターンがあり、太極拳のような動きや捌きを修得することにより戦いの中でも自らを護り相手を制することができるようになります。

動いても立禅で培った状態を保ち続けることができるよう、身体を餅のように練ってゆくことが重要です。
内功(気功)は自己の内外を一体化し鍛錬するものです。
内功の稽古の中心は立禅で。 これは鍛錬と禅を統一させた鍛錬です。 心拍数を無理に上げることなく鍛錬中に休息し、休息中に鍛錬をすることができるもので、静かに気分を落ち着かせ、精神を集中します。

この様に、どこでも誰でも、特定な場所や器具、相手も不要で、鍛錬できる武道が太気拳です。

太気拳の良さを本当に感じるには》

単にこれだけで基礎を作り、攻防一体で相手を制し、老若男女問わず実践できる生涯武道と言えます。型が無いので、実践の動きの中で、相手と対した時の動きを体感する必要があります。

この練習をするしてきましたが、直接太気拳の門を叩いた訳では無く、S先生の指導の下、ビデオや書籍、指導書等で解析しながら修行に取り込み新たな格闘技のベースを作っていきました。

では太気拳士となれば良いと言うかもしれなしが、澤井先生がそうであるように、様々な格闘技・武道を経験してから太気拳を集大成として作り上げた訳なので、S先生や私にとっても、目指す新格闘技の要素に過ぎない。

《最終的に目指す生涯武道》

人生を通じて格闘技と付き合いたいと思うのであれば、最初から太気拳が良いと言っている訳では無い。

できれば、太気拳を経験することで”気づき”、そして選ぶのであればそれで良いし、他の武道や格闘技を経験して、疑問を感じ、太気拳に行きつくのも良いと感じる。

「なるほど、これなら全ての年齢で、戦う事以外の到達点を得る」と納得できる武道を実感することが重要である。つまり”生涯を通じてできる”武道なのである。

S先生と私たちは、この生涯武道を体系化するために、若い頃は少林寺拳法やテコンドー、他の格闘技要素も取り込んで競技系の総合格闘技でスピード・力を求めて行くことは積極的に進めた。

それらの練習の傍ら、ベースになる体力作りとして、太気拳の基礎鍛錬も取り込むことで、徐々にスピード、体力の武道から、静であっても芯のしっかりした武道に移行して行くと言うイメージである。太気拳を参考にしながら、S先生の個性的な武道を皆で作り上げることとした。S先生の新格闘技である。