ミルコの趣味雑談

趣味を持つ事は大事です。始め方や、道具を揃えることなど雑談です。

格闘技と武道と趣味vol17~趣味の開花、陶芸の奥の深さにハマった~

 

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《芸術と工芸》

鑑賞する音楽や美術に興味を持つようになると、自分でもできないかと思ってしまう。当然できるものとできないもの、ハウツーも含め情報量が多く入りやすいものとどうやったらできるか判らないものも多い。

陶芸に関して工芸に目標を定めたことを描いたが、ちょっと気になったのが、工芸品と芸術の違いだった。趣味の王様と言われる陶芸は、技量と、時間と、費用が掛かるので、確かに趣味としては王様かもしれない。しかし、陶芸は芸術家?と思ってしまう。

日常使うものもあれば、明らかに鑑賞用の物もある。鑑賞ものは芸術で、使うものは工芸なのかと割り切れるかもしれない。工芸には力量や技量が必要とされるが、芸術は必ずしもそうではないので、表現者として具現化したものは物はなんであれ、芸術で、そうでない、陶器は工芸なのかもしれない。

陶芸との本格的な出会いが、東京に赴任した時の同僚に、福岡で陶芸家として創作窯を開いている義兄がいてその方を訪問したことを書いた。

その時のことを少し書き足すと、その方は広島出身との事だったが、福岡繋がりで、話が盛り上がり、帰省の際に尋ねてみようとなった。当時は伝統窯も創作窯をよくわからず、5月の連休に唐津では有田陶器市で有名なので、陶芸家とはどんなものかと興味程度であった。

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事前に連絡をお願いして、作品を見たいと言う事で、伺ったが、山の中に作陶棟を作り窯も手製の登り窯とガス窯を持たれていた。とても都会的なハイセンスな作風で、以前は大分県の日田で小鹿田焼窯で修業をしたそうである。その後小石原にもいたそうで、特徴的な飛びカンナの技法を用いた作品も多かった。

若い頃は名古屋に居てサラリーマンをしていたそうだが、広島の陶芸技術館で陶芸芸術に魅了されて陶芸家を目指すようになったと言う。ちなみに奥さんはその美術館の学芸員だったそうだ。だから、会話も知的で、知人にもサラリーマン時代の同僚で、今は会社の役員とかも多いらしいく、転勤したてだった私には、サラリーマンとしての悩みとか、カメラやPCに関しても話が噛み合い、とても面白い出会いであった。

陶芸に興味があると話をすると話は早く、では試しに作ってみたらと誘われ、言われるままに作らせて貰った。指導をして貰う中で、お客さんでは無いので、陶芸教室など流行っているものの、作る事、自分の陶器を目指す事に拘りたいなどいろいろ陶芸哲学を教えてくれた。

その時は”紐づくり”と言う、ひも状に陶土を練り、円柱状に積み上げ、隙間を潰して花瓶を作った。半乾燥になった翌日に化粧土と言う色のついた粘土液で刷毛目の下絵をして、本焼きをお願いする事にした。半年後にまた長期休暇の帰省の際に、また伺う事とした。前回の本焼きした花瓶を頂き、結構感動した。

今度はろくろを使った本格的な成形をさせて貰った。その前に、粘土(土)の均一の粒状にする為、”練り”と言う揉みほぐしをする。これと乾燥状態が次第で成形の善し悪しが決まる。業界では、”ろくろ3年練り7年”と言うらしく、体験教室でよくやるろくろ成形以上に、ろくろに乗せる粘土の練り次第で作品の成否が決まっていまうのだ。ろくろの場合、半乾燥状態でろくろので作ったものの、底部を削る。この削りは結構楽しい。しかし、これを見するとカタチにならないので注意が必要である。

削りが終わると、成形作業は終了で、自然乾燥させる。ここまで最低2日は掛る。削れる状態までの硬さになるまで、日陰で夏であれば、朝ろくろで成形(ろくろ引き)して夕方には削れる硬さになるが、冬だと翌日まで掛る。乾きすぎるとカンナが弾かれてしまうので、綺麗な形にならなくなる。陶芸の腕の善し悪しはテクニックはもちろんだが、この乾燥具合、練の善し悪しの方が影響が大きいと言える。

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こんな訪問も2年ほど続け、計4~5回は通ったが、結局釉掛けと本焼きをお願いすることになるので、作陶作業の半分しか出来ない。お世話になった陶芸家の方に言わせると、遊びで作られるのは良いが、多く作れば、本焼きスペースを取られるので、どこかで区切りをつけるべきではないかと言われた。つまり、遊びであれば、勝手の判ったと思うので、この位にして、本気でするのであれば、窯まで持たないと作陶とは言えないが、窯を持ては沢山陶器ができるので、陶器をどうするの考えておかないといけない。(「窯に責任を持つ」と言う言い方をしてました。)

と言われても…と悩んが、早々来れる訳では無いので、窯を持つ方向で何をしたら良いか聞くと、いろいろと教えてくれた。例えばろくろ成形する際のカンナ(これは売っている)、ヘラ(これは売りもはあまり無い)などで買えないものは型紙を取らせてもらい、自作することとしとし、幾つかは頂いた。また、削りの際に置く台とする”シッタ”(円錐状の陶器)は自作するしかないが、作れる程技量がないので、使ってないものを頂くこととした。あと未経験だが、本焼きに前の釉の調合を教えて貰った。これは陶芸家それぞれのレシピがあるらしく、特別教えるとの事だったが、結局作れず、陶芸用品を扱っているところを探して、北九州の三福陶芸と言う会社の透明釉とか、半濁釉とかを、粘土(土)と共に買う事にした。土は最初ちょっと赤身のあるオリジナル土の”大隈三号”を使っていたが、これに半磁器土ミックするすると丁度良い硬さになり、焼き上がりが、磁器の様にパール色で綺麗なため、今はこの様に練の段階でミックスするようにした。

お世話になった陶芸家さんとは、暫くメール等でやり取りして、上手く行かない時のアドバイスを頂いた。

しかしそもそも、教える事を生業としていないので、作品の善し悪しの品評もあまり好きではないらしく、自分が気に入ればそれで良いと言う考え方だった。

ただ、この方の陶芸に対する考え方だと思うが、趣味の陶芸に関しこの様に評していた。

趣味で作る陶器は一番高い。(当然贅沢な道具や材料をたっぷりな時間を掛けて、失敗作ばかり作る訳なので、出来上がり一つに対するコストは高い)一般の陶芸や工芸家はプロのレベル技量で、必要最低限の時間と材料、道具で数を作るからコストが安くなる。

一般に陶器が高いのは人件費な訳で、作り手の収入を作る作品数(売れる作品数)で割り算すれば、自ずと一個の単価が出る。

月収30万欲しければ、100個売れるものを3,000円以上で売れば良いと言う理屈だ。ただ、食器とかは、100円ショップで買える時代に、3,000円とかで売れる価値を買い手側が感じて貰うためにどういうものを作るかに尽きると言う話をされた。

確かにその通りで、とても厳しい世界で、これを生業とすると為には、相当な技量と世間に認めて貰う努力、PR活動、販売機会を見つけなければならない。

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そう言う目線でみるから、陶芸家からすると趣味で陶芸をしたい人と付き合うのは疲れるのだろう。とても生業には出来ない私には付き合う距離感が掴めず、東京から戻って来て連絡を取って以来、既に20年以上になるが、連絡することが無くなった。

 陶芸は今でも続けていて、およそ30年にもなる。ただ、年数は正味、一日何時間ろくろの前に座り、何年間練って来たかが物差しなので、そういう意味では3分の1位かと思う。

それでも、今はそれなりに形にはなり、ネットのフリマに出しているが、ボチボチ売れる。お恥ずかしいレベルだが趣味と実益と言ったところだ。

私にとって陶芸は集中できる雑念なしで、指から伝わる微妙な土の抵抗をコントロールしながら、イメージのカタチにしたり、削ったりする時間であり、出来上がりの善し悪しと言うより、精神的なバランスを保つ大事な時間と空間なのだ。

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